こんばんにちは。昼寝ねこです。
まず工場の話をする前にあなたはスターウォーズを見たことがありますか?
エピソード1から6まで(その後続編が出ていますが)の作品なのに4から始まり、
どこから見るのが一番楽しいのかよくわかりません。
放映順なのか、歴史順なのか…見方でとらえ方も変わると思います。
ふとしたきっかけで好きな小説を引っ張り出して会社の昼休みに読んでいたんですよ。
今回読見直したのは本多孝好のMemoryという本です。
2005年、大学生の時にMomentという本を買って読みました。
主人公も同じ大学生で、歳は違いましたが主人公と同じ目線で本を読んだわけです。
それから7年後にスピンオフ作品のWillが発売されました。
実際の年月と同じ年月を経た主人公と幼馴染の女の子は29歳になっていました。
Momentはミステリー要素の強かった話でしたがWillでは、
スピンオフ作品として主人公と幼馴染は交際しているようだけどなかなか進展しない、
そんな甘酸っぱいストーリーに、当時結婚するかどうかで悩んでいた自分を重ねて読んでいました。
その後発売された短編集のMemoryでは、主人公と幼馴染と以前に関係があった人物を焦点に、
過去の主人公と幼馴染をすこしだけ登場させるという、読者の心をわかってるなぁ~、
という展開がたまらなく面白いんですよ。
そして最後の章で現在の主人公と幼馴染がどうなっているかというシーンに触れるんですけどね。
そこで「あぁ、幸せになってくれてよかったなぁ」と泣いてしまうんですね。何回読んでも。
それで考えてたんですよ。まずは一度は発売順に読むことは大前提として、
Moment →Memoryの1章から3章を読んで→will→そしてMemoryの最終章を読むのが、
一番いいんじゃないかなぁと…まぁ僕以外にはどうでもいいですよね。
ただね、7年たってから姉妹作をだして、短編出してちゃんと完結させてくれる。
そんな作者さんの作品への愛を思うとなんだかそんな人の作品をずっと読み続けたことがとても嬉しく感じます。
前置きが長くなりましたがそれはさておき、
今回僕が書きたかったのはですね、自分の今の立場によって捉え方は変わるということなんですよ。
僕は今、工場で働いています。あなたは工場ってどんな印象を持っていますか?
きつい?汚い?危険?・・・正解!!
僕は今、他人と比べて楽な仕事をしています。
涼しい部屋で分析とか検査とか自分のペースで談笑を挟みつつのんびりと仕事をしています。
給料やっすいけどね。楽でいい。
けどね、ほかの部署に焦点を向けてみるとすごいなぁと感心します。
暑い中、熱い機械と格闘して汚れた作業着で汗水たらして働く人たち。
毎日のようにあげられる労働災害の報告…切断された指、骨折した足。
いろいろな人間。高卒もいれば院卒もいる。派遣も外国人労働者もたくさんいる。
頭のおかしい奴もいる(いやこれはどこの会社にもいるけど)。
はっきり言ってカオスですよ。
そんな中でまともな人間とコミュニティーを形成していくわけなんですが、
そういう人からよく言われるのが、
「大卒なのになんでこの仕事してるの?」ということです。
正直、傷つきます。お前はなんてしょうもないやつだと言われているきがして。
僕が答える模範解答は
「親の病気をきっかけに実家に戻ることにしたので家から近い場所で働きたくて。」
これは嘘をついていません。が、正確でもありません。
僕の経歴については機会があれば書こうと思いますが、今は置いておきます。
とにかく会社は大きいとしても、工場という場所は尊敬や羨望を受ける場所ではないのです。
そんな工場で働く立場になった今の僕がここにいる事実。
Memoryを読み直していて当時は気にも留めなかったであろう文章が、今は強く印象に残りました。
働いてうつ病になった女性が、高校の後輩である主人公の幼馴染に思いを吐露する場面です。
「就職と言っても、ああいう時期だったし、実際は契約社員。ラインには私と同じように契約社員の人もいたし、派遣の人もいたし、海外から出稼ぎに来ている人もいた。向上心にあふれてる人もいたし、そこが行き止まりだと思っている人もいた。同じ工場にいるのに、みんなが違うものを見ていた。たまたまそういう時期だったのか、いや、違うんだろうな。もともとそういう場所だったんだ。もともとそういう場所で、きっとそれでよかったんだ。みんながてんで勝手なことを言い、てんで勝手なことを考えながら、結果として本社から求められた生産量をこなしていれば、きっとそれでよかったのだ。」
この女性は社員登用されて過酷なリストラを強いる立場になりうつ病になって会社を辞め、
自分より可哀相な後輩であれば自分をあわれむこともなく話を聞いてくれると思い彼女を訪ねたのでした。
このシーンのこの話はですね、女性のつらい過去を憐れんでしかるべき場面なんですよ。
だけど本筋とはあまり関係ないのでさらっと読み通してしまうところなんですが、
でも僕はストーリーの本筋と違うけど今回このシーンで考えさせられました。
僕はこの文章を読んだとき、自分はどの立場にいるんだろうと思いました。
そしてきっと行き止まりだと思っている人だと思いました。
以前は単純に人間関係がつらくて、早起きするのが嫌で、そんな理由で社会人を辞めたいと思っていましたが、
今は社会人として行き止まりになってしまった自分。それを見続けたくなくて、
だからセミリタイアして違うベクトルで人生を見ていきたいと願っているのかもしれません。
結婚とか恋愛とかする機会があれば社会人でいる期間が長くなるんでしょうけど、
自分が行き止まりにいることは確固たる事実でしょう。区切りがついたとき辞めることになると思います。
会社を辞めることで親切してくれた人に迷惑がかかることを思うとなかなか辞めづらいと思っていましたが、
別にいんですよね。
いろんな人間がいて勝手なことを考えているのが工場という場所です。
僕は僕で勝手なことを考えて仕事をしていけばいいんですよね。
求められた仕事量をこなすのが工場の作業員というもの。それ以上のことは関係ありません。
それはもっといい条件で採用されている向上心をもった本社採用の人が考えること。
僕は周囲から期待されても会社から期待されない工場採用の作業員。
だから気楽に辞められる。それが工場採用というものです。
派遣の人は何を思って働いているのだろうか?
外国人労働者はタコ部屋に住んで祖国の家族の為に仕送りをしているんだろうか?
会社を辞めていくあの人たちはどんな夢を抱いているんだろうか?
みんな自分や誰かの為に頑張って生きているんだね。
夢をもってお金を稼ぎたいあなた。金がなくてどんな作業もいとわないロックマン。
就職に失敗したアンラッキーな人。工場へようこそ。あなたの仕事がここにはある。
ご安全に!!
…という風に僕の実体験を含むとあまりロマンティックでもなく楽しくない話になってしまいましたが、
本っていうのは読むたびに以前は気づかなかった発見があるものです。
それが人生のヒントになる場合や背中を押してくれる場合もあれば、
(そっちを書けば素敵だったんですけど、そんなこと書くキャラじゃないしな)
今回のようにダメな自分を映してしまう場合もあります。
時に見たくないものを見せるのは、本を読むとき自分の心を見つめているからなんでしょうね。
だから僕は本が好きです。好きな本はずっと取っておいてふとした時に読み直してみると面白いですよ。
僕は隠居したら好きな本と思い出に浸って生きていきます。
思い出は優しいから甘えるなと、偉人ではなく高校生の時にやったあるゲームで言っていましたが、
甘えたっていいじゃない。一度きりの人生だもの。